音小屋・音楽ジャーナリストコース(小野島講座)

音小屋・音楽ジャーナリストコース(講師・小野島大)の受講生の作品を掲載していきます

root13.「窓際/少女/水槽/2月」(2011)

root13.「窓際/少女/水槽/2月」

 人との別れは、突如やってくる。そして、それ
は、気が付いたときには、もう手の届かないとこ
ろに行ってしまう。どこかで、終わりが来ること
が分かっていても、今を大切にできないときがあ
る。

 大阪を中心に活動している、男女ツインボーカ
ルのスリーピースバンドroot13.。自主制作作品
から、ボーカルのオオタケンイチの手書きによる
歌詞カードとイラストレーターのフクザワの絵が
CDを手に取った瞬間から、root13.の世界へと誘
う。root13.の世界は、オオタケンイチの創り出
す純粋で一切の穢れのない青い世界である。青い
純粋な気持ちを持ち続けているオオタケンイチが、
その気持ちを言葉にし、その言葉がナカジマサキ
の優しいベースと透き通ったコーラス、ハタケヤ
マシュウスケの奏でる的確で温かいドラムの音と
化学反応を起こし聴くものの心に直接伝わる。

 root13.の歌詞は、’’リリィ’’という、八年前
の二月の朝、僅か17歳という若さで自ら命を絶つ
ことを選んだ少女を中心に描かれている。そのた
め、儚くも短い命の中で無駄にして良い時間は、
一秒もなく、生きている一瞬一瞬がいかに大切で
あるかを鮮明にする。『曖昧なディア』では、<
いつか遊ぼう なんて言わないで 今この手に
 触れて欲しいから 何にも与えられないけど 
なんとなくそこに居ていいかい?>「いつか」と
いう言葉は、曖昧であり、いつかが来ない場合は
いくらでもある。いつかって言うならば逢えてい
る今を大事にしたい、して欲しいと思う気持ちを
歌う。また、『リリィ』では、<二月の朝の事
 守れなかった事 僕はなんで 時々思い出せな
くなるんだろう 「いつか話そうよ」なんて「ま
た会えるよ」だなんて 僕らいつも騙されたフリ
して〉「いつか話そうよ」「また会えるよ」と約
束したのに守ることができずに別れがきてしまっ
た。「いつも」「また」という言葉に騙されて結
局叶わない。そういうことは、生きている中でい
くらでもある。しかし、出来ることなら、「いつ
か」や「また」でなくて今をもっと大切にしよう。
いつ死ぬかわからないし、いつ関係が破綻するか
わからないから。これらの気持ちは、生まれたと
きは誰もが持っているのに、いつしか忘れてしま
い、適当になってしまう。それは、また次がある
という経験をしてしまうからである。そして、絶
対あると言い切れない次を過信してしまう。しか
し、終わりは、突然来る。気が付いたときには、
もう取り返しがつかない。だから、まだここにあ
る今を大事に大切にして欲しい。それこそが、穢
れのない純粋な青い世界なのだと思う。

 オオタケンイチがライブの際に毎回大切に言う
言葉がある「見つけてくれて、ありがとう。選ん
でくれて、ありがとう。そこにいてくれて、あり
がとう。」この言葉こそがroot13.というバンド
のすべてを物語っている。(三島翼)